不倫をされた時の慰謝料請求について知っておきたいポイント
皆さんは配偶者に不倫をされた場合、どのように対処されるでしょうか。
配偶者の不倫に悩んだ末、当社に相談に来られる方の中には大きく分けて2種類の考え方があります。
それを大まかに言うと「離婚する」か「離婚しない」かに分かれます。
離婚をするかしないかによっては慰謝料の額が変わってくる可能性があります。
また慰謝料請求の仕方も状況によっては変えていく必要があると私は考えます。
ただ、どちらにしても不倫の事実があり、その証拠を掴むことができれば慰謝料請求の権利が生まれます。
その権利を行使するにはどのようにすれば良いか、慰謝料請求の方法や種類と共に解説していきます。
不倫をした夫(妻)や不倫相手に慰謝料請求するにはどのようにすれば良いか
不倫の事実を記録した証拠を掴み、いざ慰謝料請求に踏み切りたいと思っても初めてのことなのでどういう方法があるのかわからない、という方は大勢いらっしゃるかと思います。
慰謝料請求というと弁護士に依頼したり訴訟を起こしたりしないといけないのではないかとお考えになる方も多いことでしょう。
ですがそのようなことはなく、ご自分でも慰謝料請求を行う事は可能です。
主な慰謝料請求の方法としては下記のようなものがあります。
- 自分で交渉する。
- 内容証明郵便を送る。
- 調停を申し立てる。※不調に終わった場合は訴訟を提起する。(配偶者に慰謝料を請求する場合、離婚せずとも請求は可能ですが、通常は同じ家庭のお金から支出することになるので、今回は離婚することを前提として説明します。離婚前に慰謝料について話し合う夫婦関係調整調停もあります。また浮気相手にはいきなり裁判を起こすことも可能です。)
離婚はせず、あまり事を荒立てたくない方や予算をかけたくない方、自分自身で決着をつけたい方は「自分で交渉する」という手段を選ばれます。
配偶者や不倫相手が話し合いに応じる姿勢を見せており、自分自身で話をまとめる自信があるという方はこの方法を選択しても良いでしょう。
しかし、口約束では本当に慰謝料を支払うかどうかが定かではありません。
取り決めしたことは書面にまとめ、署名・捺印してもらうのがベストです。
その際は状況に応じて「示談書」、「和解書」、「誓約書」等の書面を作成すると良いでしょう。
さらに、作成した書面に強制力を持たせるには、相手に合意を得た上で公証役場にて公正証書にすることもできます。
そうすれば支払いがない場合や、分割の支払いが滞った場合に強制執行(差し押さえ)をすることが可能になります。
一人だけでは心細いという方は、交渉の段階で弁護士を介入させる、第三者に立ち会ってもらうというのも方法の一つです。
次に「内容証明郵便を送る」という方法です。
こちらは配偶者に送るケースもありますが、不倫相手に請求する場合に用いられる事が多いです。
相手が話し合いに応じない、相手の顔も見たくないという方はこの方法を選択すると良いでしょう。
相手に対して心理的なプレッシャーを与えることができるでしょう。
こちらは自分で作成することもできますが、専門家である弁護士などの法律家に依頼される方のほうが多いです。
最後に上記の方法を試しても相手が応じない場合は「調停を申し立てる」という手段を選ぶことになります。
配偶者の場合は管轄の家庭裁判所に、不倫相手の場合は相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てを行います。
重苦しい印象を受けますが調停委員が間に入って話をまとめてくれるという感覚です。
話がまとまれば調停調書が作成され、相手に対して強制執行をすることができます。
調停が不調に終われば訴訟を提起することになります。
裁判の場合は証拠の提示を求められるため、不貞行為の証拠を押さえておく必要があります。
慰謝料請求に必要な証拠
慰謝料を請求する際には当然、不倫の事実を把握しておくことが前提です。
証拠がなくても相手が認めれば慰謝料を請求することは可能ですが、不貞行為の証拠を押さえておけばどういった状況に転んだとしても対応することができる為、証拠を押さえておくことをおすすめします。
前述したように相手が認めることも証拠です。
但し、証拠もなく、相手に認めさせるというのは至難の業です。
また、仮に認めたとしても後からそれを撤回してくる可能性もあります。
そうなればやはり言い逃れのできない証拠が必要になります。
では、慰謝料を請求することができる証拠とはいったいどのようなものになるのでしょうか。
慰謝料を請求するには不貞行為、つまり肉体関係があるということを確認若しくは推認できる証拠が必要になります。
そうなると配偶者と浮気相手がホテルや自宅へ出入りするシーンを押さえるのが一番証拠能力の高いものと言えます。
ただし、偶然性というものを完全に排除するのであれば出入りのシーンは複数回押さえておく必要があります。自宅への出入りの場合は特に回数を重ねるべきでしょう。
なぜなら、ラブホテルという場所であれば男女が性行為を行う場所という世間の認識がありますが、自宅は必ずしもそうではないからです。
また、継続的に複数回の不貞行為が確認できれば慰謝料の増額も望めます。
他にも浮気相手との肉体関係があることが推認できるようなメールや手紙、ホテルの領収書等も証拠にはなりますが、この場合二人には逃げ道が残ることになるので、あくまで上記の証拠の補助的な意味合いで残しておくべきでしょう。
不貞行為の証拠についてはさらに詳しく書かれた記事があります。(※詳しくは「裁判で使える浮気の証拠」をご覧ください。)
慰謝料請求の手続きの流れについて
慰謝料請求の方法の中に「調停を申し立てる。(不調に終わった場合は訴訟を提起する。)」とありますがこちらは基本的に交渉や内容証明郵便を送るという方法で話がまとまらなかった場合にだけ選択したほうが良いでしょう。
時間やお金がかかってしまうため、調停や裁判をせずとも慰謝料の支払いが望めるのであればそれに越したことはありません。
まず、いずれの方法においても最低限必要な情報としては、請求する相手の氏名、住所、そして不貞行為の証拠になります。
これがないまま慰謝料の請求は行えません。
次にそれぞれの方法においての手続きについて解説していきます。
ここでは交渉に関しては割愛します。
まず内容証明郵便を送るという方法ですが、ご自分が今後望むもの、何を一番優先するかということによって送る内容も変わってきます。
例えば配偶者との復縁を望んでいる為、関係を清算してもらいたいという場合、しっかりと約束を守ってくれるのであれば慰謝料は請求しないというパターンもあります。
※ただしこの場合は再び会っていることが確認された場合の条件も取り決めておくべきです。
つまり、弁護士や司法書士(※司法書士の中には土地・不動産・法人登記を業として内容証明郵便の作成や裁判手続きを業務として行っていない事務所もあります。)、行政書士に依頼するのであれば、目的はどこにあるのかという部分を優先し、クライアント目線で内容を考えてくれる事務所に依頼するべきでしょう。
次に調停、裁判に関しての説明です。
配偶者への慰謝料請求は離婚調停と同時に話し合いを行うことが多いです。
調停に必要な印紙や切手、申立書を用意して、相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立てを行います。
不倫相手に対しては相手方の住所地の簡易裁判所に民事調停の申し立てを行います。(配偶者と同時に慰謝料請求調停を申し立てる際は家庭裁判所の家事調停で申し立てを行うことができる場合もあります。)
調停では必ず証拠が必要というわけではありません。
しかしながら調停委員も人間なので、こういった事実がある、話に信憑性があるという場合には当然理解を示します。
調停委員にいかに理解してもらうかという部分が重要かもしれません。
裁判の場合は同じように裁判所に訴状を提出します。
訴状には請求する慰謝料の額と、その根拠となる不貞行為の詳細を記載しなければいけません。
相手から反論があり、裁判官から証拠を求められた場合は不貞行為の証拠を提出する必要があります。
民事裁判では判決には至らず和解の協議になることも多々あります。
原告と被告の間で和解条項を取りまとめて提出すれば双方合意の上となりますし、一方が和解条項案を提出して裁判官が和解勧告を行うこともあります。
また双方で主張が異なる場合は裁判官が独自に和解条項を作成して勧告することもあります。
その内容に合意した場合は和解調書が作成され、それに基づいて強制執行が可能となります。
合意できない場合は裁判官が判決を下すことになります。
慰謝料を請求する際に注意しなければいけないこと
慰謝料請求の額はケースバイケースですが、多額の金銭を請求することに変わりはありません。
つまり、相手もそれだけ慎重になり、こちらもそれなりの証拠を用意しなければならないのです。
請求する際の注意点をご案内しますので参考にして下さい。
・お金を持っていない
こういうケースもあります。
お金がなく、収入もなければ請求のしようがありません。
・勝手な推測で高圧的な慰謝料請求を行う
いつも一緒に生活をしている配偶者であれば些細な変化にも気が付くはずです。
浮気をしているのではないか、あの人が怪しい等、いろんなことが不安になってしまいます。
だからといっていき過ぎた推測は良くありません。
何の根拠もなく浮気相手と思われる人物に対して問い詰め、実際にはその事実がなかった場合、相手から名誉棄損等で訴えられる場合があります。また、事実があったとしても脅迫をしてはいけません。あなたの立場が悪くなってしまいます。
慰謝料を請求する場合はしっかりと事実を確認し、証拠を押さえ、冷静に対処すべきです。このような問題は感情的になってしまいがちですが、感情的になっても何もメリットはありません。
・浮気相手の配偶者から慰謝料を請求される
仮に離婚する気はなく、夫(妻)の浮気相手にのみ慰謝料を請求したとします。
相手が独身の場合は問題ないでしょう。ただこれが俗に言うダブル不倫であった場合、請求の事実を浮気相手の配偶者が知ってしまうと、あなたの夫(妻)が慰謝料を請求される可能性があります。
相殺となるケースが多いですが、家庭のお金が持って行かれるようなことになってはあなたにとっても痛手になるはずです。
浮気相手にだけ請求をお考えの方は、相手の身元や既婚者かどうか等の情報を把握し、慎重に慰謝料請求を行う必要があります。
・求償権を行使される場合
前項と同じように離婚しない場合の話です。
求償権とは簡単に言うと「あなたの代わりに(あなたの分も)お金を払ってあげたのだから、あなたが払うべきお金は私に返して下さい。」というものです。
慰謝料とは個々に請求するイメージがありますがそうではありません。
そもそも浮気(不倫)は一人ではできません。精神的苦痛を与えたのは夫(妻)とその浮気相手の二人です。
つまり二人がそれを弁済する義務があります。
仮に夫(妻)の浮気相手にだけ慰謝料200万円を請求したとしましょう。
浮気相手は200万円を支払いましたが、自分だけが支払ったことを知りました。
これに納得のいかない浮気相手はあなたの夫(妻)に対して求償権を行使し、100万円の支払いを求めました。
どうでしょうか。前項と同じように家庭のお金に傷がつくことになります。
離婚しない場合はこういった点にも注意する必要があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「浮気=慰謝料」というイメージが強いですが、多額の金銭を請求するということは決して簡単な事ではありません。
しっかりと事実を確認し、確たる証拠を押さえておけば心配ありませんが、
それでも相手が悪いからと言って自分の要望を全て通すのは難しいことです。
配偶者とのこれからの生活をどうするか、浮気相手はどういった人で家族構成は?
考えなければいけないことはたくさんあります。
もし配偶者が浮気をしているようであれば一人で悩まず、信頼できる人に相談して下さい。