行方不明者を捜す方法は? 早期発見のポイントを現役探偵が解説


日本では毎年約8万人が行方不明になっています。
認知されていないものも含めばその数はさらに増えるでしょう。
行方不明となる原因は様々であり、最も多いのが家庭の問題によるもので、次に認知症と続きます。年代は原因に比例し、10代がトップ、次いで70代以上となります。
年間8万人というと大変な数です。しかし、発見率が9割以上と高く、発見されない人は1割にも満たないというデータが出ています。
それでも約8千人近くの人が発見されていないことになります。
これは深刻な問題であり、警察も生命の危機や犯罪の可能性があると判断した場合には積極的に捜索を行ってくれます。
今回は無くなることのないであろう「行方不明」、「失踪」、「蒸発」、「家出」といった問題を取り上げて、警察の対応、その他の捜索方法等について説明します。

まず、行方不明者の捜索の手段についてですが、配偶者や親族、友人、知り合い、同僚などが行方不明になった場合、最初に考えるのは警察への捜索願を出すという方法でしょう。
但し、原則、捜索願を出せるのは親族や配偶者のみです。その他、福祉事務所の方、同居者や雇い主等の当該行方不明者と社会生活において密接な関係を有する者からの届出も受理してもらえるようですが、この場合は関係性を証明できることが前提でしょう。
つまり上記の友人、知り合い、同僚に関しては、その親族や配偶者に捜索願を出してもらう必要があります。
行方不明にも種類があります。「通常の行方不明者
の他に「特異行方不明者」という分類があります。
以下に該当する場合は特異行方不明者として受理してもらうことができます。

  1. 殺人、誘拐等の犯罪により、その生命又は身体に危険が生じているおそれがある者
  2. 少年の福祉を害する犯罪の被害にあうおそれがある者
  3. 行方不明となる直前の行動その他の事情に照らして、水難、交通事故その他の生命にかかわる事故に遭遇しているおそれがある者
  4. 遺書があること、平素の言動その他の事情に照らして、自殺のおそれがある者
  5. 精神障害の状態にあること、危険物を携帯していることその他の事情に照らして、自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがある者
  6. 病人、高齢者、年少者その他の者であって、自救能力がないことにより、その生命又は身体に危険が生じるおそれがあるもの

以上の項目に該当すると警察に特異行方不明者として扱われ、各都道府県の警察署と連絡を取り合い捜索、発見に努め、何かしらの情報があった際には捜索願を出した届け出主に連絡が来る仕組みになっています。
しかし、あくまで警察では重大な事件に関わっている可能性が無い限り、パトロールや職務質問、巡回連絡、少年の補導、交通の取締り、捜査やその他の警察活動の中で捜索を行う為、個別の事件として何万人も動員してしらみ潰しに捜索を行うといったイメージではありません。その為、どれぐらいの時間があれば見つかるかという見当が付けにくい状況にはなります。

さらに警察で特異行方不明者として扱われない場合には積極的な捜索は望めず、免許の更新の際や偶然取り締まった場合等にしか知らせてもらうことができません。
また前述したように親族や配偶者以外の人物が失踪した場合においては警察の協力を仰ぐことはできません。
行方不明になった友人や同僚が未婚で、家族とも疎遠であり、身寄りもない場合等は捜索願を出すことすらできないのです。そのような状況は通常考えにくいと思われるかもしれませんが、探偵の仕事をしているとそういった相談も多々あります。
また行方不明者が仮に金銭トラブルの相手であったとしても、警察は民事不介入なので対応はしてくれません。

自分でできる捜索方法

警察に捜索願を出したが、早急に発見したい、自分でもできることをしたい、また、警察の積極的な捜索が望めない場合や、捜索願を出すことすらできない場合はどのようにすれば良いのでしょうか。

簡単な物として、最近ではインターネットが普及し、インターネットを通じて社会的なネットワークを構築するサービス、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(通称:SNS、以下SNSと記載)や人探し掲示板と呼ばれるものも存在します。
Facebook(フェイスブック)というSNSでは原則、実名登録が必須条件となっているため、アカウントを探すことが容易であり、場合によっては勤務先や現住所(市単位)、最近の行動を載せていることもあります。一度試してみても良いでしょう。
しかし、何か理由や原因があって自ら姿を隠していたり、逃げていたりする方はこういった所に情報を載せたり投稿したりということは考えにくいので、単純に居場所がわからなくなってしまった場合等にだけ有効なものとなる可能性が高いです。但し、交友関係に関しては把握できる可能性があるので参考にしてみると良いでしょう。

失踪した人物が、捜索願を出した方の名義の携帯電話を所有している場合は、通話履歴(発信履歴のみ)の明細を確認することができます。
これによって失踪する直前に誰かと頻繁に連絡を取っているようであれば、その人物と行動を共にしている可能性が高くなるでしょう。

また行方不明になる直前の行動がわかっており、交友関係もある程度把握できるようであれば、友人から情報収集するという手もあります。但し、友人が匿っている可能性があれば、接触してしまうと、そこからも逃げてしまうことになるのでご注意ください。

探偵に捜索を依頼する

行方不明者を捜索する場合、特に「特異行方不明者」として受理されない場合は自分で捜索する、警察からの連絡を待つというだけでは、早期発見を望むのは困難な事であると言えます。

そういった時は探偵に捜索を依頼するという方法があります。
探偵事務所や興信所も人探し・所在調査を業務として行っています。

人探し・所在調査といっても内容は様々で、その中に「行方不明者の捜索」も含まれます。
引っ越しや、時の経過によって単純に居場所がわからないという場合と、行方不明や失踪とでは探し方や難易度も大きく異なってきます。
何が違うかというと、「固定の居住地があるかないか」です。もう少し分かり易く言うと前者は「居場所はわからないがどこかには住んでいる」、つまり「住所が分かる=その人物の所在がわかる」という方程式が成り立ちます。
必ずしもそうではないかもしれませんが、大半の方はこれに当てはまります。
一方、後者は「住んでいた住所から出て行ってしまった」という状況です。つまり「住所が分かる=その人物の所在がわかる」という方程式が最初から崩れてしまっています。
これは行方不明になってからの期間にもよりますが、住所ではなく、個人の所在を探す業務となります。
前者と後者をケースごとに振り分けてみます。

前者

  • 生き別れた家族を探したい
  • 学生時代の恩師に会いたい
  • 遺産相続の為、疎遠になっている親戚を探したい

後者

  • 子供が家出した
  • 夫が遺書を置いて失踪した
  • 従業員が会社のお金を持って蒸発した

となります。どちらにも当てはまるケースとしては「お金を貸した相手が逃げてしまった」等があります。

「じゃあどこかに住み始めて生活の拠点を置いた方が色々と情報がわかるのではないか」と思われるかもしれませんが、それは何年先になるかわかりません。命の危険があるかもしれないのにそんな悠長なことは言っていられませんよね?
通常の人探し・所在調査とは異なり、行方不明者の捜索は時間が命です。
時間が経てば行方不明者の足跡も消えてしまいます。
現在把握している情報を整理して所在調査を得意とする探偵社や興信所に相談してみると良いでしょう。

探偵はどのような調査を行うのか

では、探偵に行方不明者の捜索を依頼した際にはどのような捜索をしてくれるのでしょうか。
これに関しては探偵のノウハウであり、すなわち商売道具になるので具体的なことは言えません。

しかし、皆さんが想像されるであろう「聞き込み調査」は基本中の基本で、やはり行うことが多いです。
失踪前の行動パターン、交友関係、趣味、滞在すると思われる場所、ゆかりのある土地、移動手段、連絡ツール、経済状況、所持品、自宅に残していった物など様々な情報から足取りを掴めることがあります。
「そんな情報が必要なのか」、「こんな情報は当てにならないかも」と思われるかもしれませんが、ふとした情報が発見に繋がることも多々あります。
迷わず探偵に情報を提供してください。

こういったこまめな聞き込み調査は、聞き込みした件数が多いほど情報が集まります。シンプルな方法ですが、やはりコツがあり、慣れているのと慣れていないのでは差が出てくるものです。
また、かなり労力のかかることなのでいろんな人に頼みづらいといった部分もあるかと思います。失踪して間もないのであれば早期解決に繋がる有力な方法であると考えます。

その他、補足や注意点について

最後に、行方不明者の捜索を行う際の補足や注意点、起こりえるトラブルについて説明します。

まず、行方不明者の捜索に限らず、人探し・所在調査全般に対して言えることですが、昨今、探偵社に所在調査を依頼した依頼人が殺人事件や脅迫事件、ストーカー事件などに関与してしまったなどの様々なトラブルを耳にします。
我々も依頼を受ける際には細心の注意を払っていますが、中には依頼の内容や目的を偽る方もいます。このような方たちの依頼は受け付けることができません。
ご相談される際に、相談される方と行方不明者の関係性、行方不明者についての情報、行方不明となってしまった経緯など様々な事をお聞かせ頂くことになります。これは行方不明者を捜す為にも必要な情報となります。

また注意点としては、身内や家族の失踪で行方不明者の発見後の生活に支障が出るような捜索の仕方は考えるべきです。
命の危険が考えられたため、自殺をほのめかす内容の遺書を置いて出て行ったことを写真付きの手配書に記載し、近所への聞き込みや生活圏内に配布した所、発見後に周りの目が気になってしまう、家から出られないといったケースもあるようです。
これは命の危険があるため、仕方のないことなのですが、聞き込みの仕方、文章のつくり等は気を付ける必要があります。
以上のように、人探し・所在調査などで行方不明者を捜索する際には個人情報や行方不明者の人権など様々なトラブルを懸念して捜索にあたらなければなりません。